想いを届けて、ブランドを育てる!ペットフード事業を成功に導く「表示」と「マーケティング」

最高のペットフードの試作が完了!でも、どう届ける?どう続ける?表示ミスで信頼失墜、戦略不足で事業頓挫…。そんな悲劇を避けるため、法律遵守の表示術から、心に響くマーケティング、そして盤石な事業計画まで、成功への道を具体的にナビゲートします。

みなさん、こんにちは。ペットフード事業コンサルタントの荒木です。

素晴らしい製品アイデアを、試作品としてカタチにすること。これは、ペットフード事業における最初の、そして非常に重要なステップです。

しかし、どんなに素晴らしい試作品が完成したとしても、それだけではビジネスとして成功することはできません。製品の価値がお客様に正しく伝わり、手に取っていただき、そして何よりも、その事業が長く愛され、継続していかなければ、みなさまの「ペットのために」という熱い想いも、残念ながら途絶えてしまうことになりかねません。

そこで今回は、試作品ができた「その後」に待ち受ける、

  • 製品の顔であり、お客様との約束でもある「パッケージ表示」の重要性と法令遵守
  • 製品を届け、ファンを増やし、事業を成長させていくための「マーケティングと事業継続」の戦略

という、ビジネスを成功へと導くために不可欠な2つの大きなテーマについてお話しさせていただきます。この記事が、みなさまのブランドを育て、事業を軌道に乗せるための一助となれば幸いです。

1.「知らなかった」では済まされない!信頼を築くパッケージ表示と法令遵守の徹底

さて、まず最初にお話ししたいのが、製品の「顔」とも言えるパッケージ表示についてです。 お客様が製品を手に取ったとき、そこに記載されている情報は、製品の品質や特徴を理解し、安心して購入するための、非常に重要な手がかりとなりますよね。この表示内容が不正確だったり、法律で定められたルールに違反していたりすると、お客様からの信頼を大きく損ねてしまうだけでなく、場合によっては行政からの指導や罰則の対象となり、事業の存続自体が危うくなる可能性すらあります。

「うちはOEMメーカーに製造も表示も任せているから大丈夫」そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、最終的な表示内容に対する責任は、製品を販売するブランドオーナーである「あなたの会社」にある、ということを認識するのが重要です。

なぜ、パッケージ表示がそれほどまでに重要なのか?

  • 消費者保護の観点: ペットフードは、大切な家族の一員である犬や猫の健康を直接左右するものです。そのため、消費者は、製品に含まれる原材料や成分、与え方などについて、正確で分かりやすい情報を得る権利があります。適切な表示は、消費者が安心して製品を選び、正しく使用するために不可欠です。
  • 信頼構築の基盤: 正確で誠実な表示は、お客様からの信頼を築く上での基本中の基本です。逆に、誤解を招くような表示や、ルール違反の表示は、たとえ意図的でなかったとしても、一度失った信頼を取り戻すのは非常に困難です。
  • 法的リスクの回避: ペットフードの表示に関しては、「ペットフード安全法(愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律)」や「ペットフードの表示に関する公正競争規約」(ペットフード公正取引協議会のルール)、さらには「景品表示法」や「薬機法(旧薬事法)」といった、様々な法律やルールが関わってきます。これらを遵守することは、法的リスクを回避し、健全な事業運営を行うための必須条件です。

ペットフード表示に関わる主な法律・ルールと注意点

  1. ペットフード安全法:
    • 目的: 愛がん動物用飼料(ペットフード)の安全性を確保し、ペットの健康を守り、動物愛護に寄与すること。
    • 表示義務: 製造業者名または輸入業者名とその住所、賞味期限、原材料名(添加物を含む全て)、原産国名(最終加工が行われた国)などの表示が義務付けられています。
  2. ペットフードの表示に関する公正競争規約:
    • ペットフード公正取引協議会が定める業界の自主基準ですが、多くの事業者がこれを遵守しています。
    • 「総合栄養食」「間食」「療法食」「その他の目的食」といった目的別の表示や、たんぱく質、脂質、粗繊維、灰分、水分などの「保証成分値」の表示方法など、より詳細なルールが定められています。
    • 「無添加」「自然派」といった表示に関するガイドラインも示されており、消費者に誤解を与えないような表現が求められます。
  3. 景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法):
    • 優良誤認表示の禁止: 事実と異なる、あるいは事実よりも著しく優れていると誤解させるような表示(例:「最高級の原料のみ使用!」と謳っていても、客観的な根拠がない場合など)は禁止されています。
    • 有利誤認表示の禁止: 価格や取引条件について、実際よりも著しく有利であると誤解させるような表示(例:「期間限定半額!」と長期間表示し続けるなど)も禁止です。
  4. 薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律):
    • ペットフードは医薬品ではありませんので、「病気が治る」「症状が改善する」「涙やけがなくなる」といった、医薬品的な効果効能を暗示・明示するような表示は一切できません。健康維持に関する表現(例:「健康な皮膚・被毛の維持をサポート」など)は可能ですが、その表現の範囲には細心の注意が必要です。

表示で「つまずかない」ための具体的アクション

  1. 関連法規・規約を徹底的に理解する: まずは、上記の法律や規約の条文、そして関連するQ&Aやガイドラインなどを熟読し、内容を正確に理解することがスタートです。これらの情報は、消費者庁や農林水産省、ペットフード公正取引協議会のウェブサイトなどで公開されています。
  2. OEMメーカーとの連携と責任分担の明確化: 表示案を作成する段階からペットフードOEMメーカーの専門担当者と密に連携し、法規に照らして問題がないか、誤解を招く表現はないかなどをダブルチェックしましょう。そして、最終的な表示内容の責任の所在や、万が一表示に誤りがあった場合の対応について、契約書等で明確にしておくことが重要です。
  3. 専門家(行政書士、弁護士、コンサルタントなど)への相談: 表示内容に少しでも不安がある場合や、新しい訴求表現を検討している場合などは、ペットフードの表示に詳しい行政書士や弁護士、あるいは私のようなコンサルタントに相談し、専門的なアドバイスを受けることを強くお勧めします。
  4. 「あいまいな表現」「大げさな表現」は避ける: 特に「無添加」「オーガニック」「自然派」「ヒューマングレード」といった言葉は、法的な定義が確立していない場合が多く、消費者に過度な期待や誤解を与えやすい側面があります。これらの言葉を使用する場合は、何を添加していないのか、何が自然派なのか、といった具体的な範囲を明確に示したり、客観的な根拠(認証など)を提示したりするなど、誠実で誤解のない表現を心がけましょう。
  5. 常に最新情報をキャッチアップする体制を: 法律や規約は、社会情勢の変化などに応じて改正されることがあります。定期的に関連省庁や業界団体の情報をチェックし、常に最新のルールに対応できるように、社内での情報共有体制を整えておくことが大切です。

パッケージ表示は、いわば「お客様との静かな対話」です。その対話が誠実で、信頼に足るものであって初めて、お客様との長期的な関係が築けるのだということを、ぜひ心に留めておいてください。

2.「作っただけ」では届かない!情熱をビジネスに変えるマーケティングと事業継続の極意

さて、素晴らしい中身が完成し、パッケージ表示も法規に則って完璧に準備できたとしましょう。しかし、残念ながら、それだけでは「売れる」とは限りません。特に競争の激しいペットフード市場においては、「良いものを作れば、自然とお客様がついてくるはずだ」という考えは、残念ながら通用しにくいのが現実です。

製品に込めた想いや価値を、それを本当に必要としているお客様に「届け」、そしてお客様に「選ばれ」、さらに事業として「継続」していくためには、しっかりとした「マーケティング戦略」と「事業計画」が不可欠なのです。これが、二つ目の大きなテーマです。

なぜ、「マーケティング」と「事業計画」がそれほどまでに重要なのか?

  • 「知ってもらう」ための努力: 世の中には、本当にたくさんの種類のペットフードが存在します。その中で、新しく生まれたみなさんの製品の存在を、まずお客様に知ってもらわなければ、購入の選択肢にすら入ることができません。
  • 「選ばれる理由」の明確化: たとえ知ってもらえたとしても、「なぜ、他の製品ではなく、あなたの製品を選ぶべきなのか?」という明確な理由(独自の強みや価値)が伝わらなければ、お客様はなかなか購入には至りません。
  • 「継続」のための羅針盤: 情熱だけで事業は続けられません。初期投資や運転資金をどのように確保し、どれくらいの期間で回収し、どのように利益を生み出し、そして事業を成長させていくのか。その道筋を示す「事業計画」がなければ、暗闇の中を手探りで進むようなものになってしまいます。

「市場で成功し、事業を継続させる」ための具体的アクション

  1. 「誰に届けたいのか?」ターゲット顧客を徹底的に深掘りする:
    • 「全ての犬(猫)と飼い主さんのために」という想いは素晴らしいですが、マーケティング戦略を考える上では、まず「特にどんな飼い主さんに、どんなペットに届けたいのか」というターゲット顧客像(ペルソナ)を、できるだけ具体的に設定することが重要です。年齢、性別、ライフスタイル、ペットの種類や年齢、健康状態、価値観、情報収集の方法、今抱えている悩み…など、細かく設定することで、製品開発の方向性や、どんなメッセージが響くのか、どのチャネルでアプローチすべきか、といった戦略が見えてきます。
  2. 「これしかない!」と思わせる独自の強み(USP)とブランドストーリーを磨く:
    • USP(Unique Selling Proposition)とは、みなさんの製品やブランドだけが持つ「独自の売り」や「お客様にとっての特別な価値」のことです。価格なのか、品質なのか、特定の原材料へのこだわりなのか、あるいはサービスの独自性なのか。競合製品と比較して「何が違うのか」「何が優れているのか」を明確にし、それを分かりやすい言葉で伝えられるようにしましょう。
    • そして、そのUSPが生まれた背景にある「想い」や「開発秘話」、「ブランドが目指す世界観」などを、共感を呼ぶ「ブランドストーリー」として語ることで、お客様は製品だけでなく、ブランドそのものに愛着を感じてくれるようになります。
  3. 「出会いの場」を最適化する販売チャネル戦略を練る:
    • 開発した製品を、どこでお客様に手に取ってもらうのか。自社ECサイトや大手ECモールといった「オンライン」なのか、ペット専門店や動物病院、トリミングサロンといった「オフライン」なのか。あるいは、それらを組み合わせるのか。それぞれのチャネルにはメリット・デメリットがあり、また、ターゲット顧客によって最適なチャネルも異なります。
    • 近年盛んなD2C(Direct to Consumer)モデルは、仲介業者を通さずに直接お客様と繋がることで、顧客データを収集しやすく、ブランドの世界観も伝えやすいというメリットがありますが、集客や物流を自社でコントロールする必要があります。自社のリソースや製品特性、ブランド戦略に合わせて、最適な販売チャネルを選び、構築していくことが求められます。
  4. 「心に響き、行動を促す」効果的なプロモーションを展開する:
    • 製品の魅力やブランドストーリーを、ターゲット顧客に効果的に伝えるためのプロモーション活動は多岐にわたります。
      • ウェブサイト/ECサイト: ブランドの顔であり、情報発信の拠点。分かりやすく、使いやすく、そして信頼感のあるデザインが重要です。
      • SNSマーケティング: Instagram、X(旧Twitter)、Facebook、YouTubeなど、ターゲット顧客が集まるプラットフォームを選び、共感を呼ぶコンテンツ(製品情報、ペットとの暮らしに役立つ情報、ブランドの裏側など)を発信し、お客様とのコミュニケーションを深めます。
      • コンテンツマーケティング: ブログ記事や動画などで、ペットの健康やしつけに関する専門的な情報や、お客様の悩みを解決するような質の高いコンテンツを提供することで信頼性を高め、見込み客を引きつけます。
      • インフルエンサーマーケティング: 信頼できるペット関連のインフルエンサーに製品を試してもらい、その感想を発信してもらうことで、認知度向上や購買意欲の喚起に繋げます。
      • その他: サンプリング、初回購入割引、イベント出展、プレスリリース配信など、製品やブランドのフェーズに合わせて様々な手法を組み合わせます。
  5. 「事業の羅針盤」となる実現可能な事業計画を策定し、柔軟に運用する:
    • 事業計画には、売上目標、必要な初期投資額(製品開発費、広告宣伝費など)、運転資金(仕入れ費用、人件費、家賃など)、原価計算、損益分岐点分析、キャッシュフロー計画などを盛り込み、具体的な数値目標と達成までの道筋を明確にします。
    • そして、計画を立てるだけでなく、定期的にKPI(重要業績評価指標:例えば、ウェブサイトのアクセス数、購入転換率、顧客獲得単価、LTV(顧客生涯価値)など)を設定し、その達成度をモニタリングし、計画通りに進んでいない場合は原因を分析し、改善策を実行する、というPDCAサイクルを回していくことが、事業を成長させるためには不可欠です。
    • 市場の状況や競合の動きは常に変化します。最初に立てた計画に固執しすぎず、状況に応じて柔軟に戦略を修正していく勇気と判断力も、経営者には求められます。時には、事業の方向性を転換する「ピボット」や、残念ながら事業から撤退するという厳しい判断も必要になるかもしれません。
  6. 「ファン」を増やし、「長く愛される」ためのLTV(顧客生涯価値)向上施策を:
    • 新規顧客を獲得するには多くのコストがかかります。一度購入してくれたお客様に、いかにして「また買いたい」「このブランドのファンであり続けたい」と思ってもらえるか、つまりLTVを高めるための取り組みが、事業を安定的に成長させるためには非常に重要です。
    • 具体的には、お得で便利な「定期購入システム」の導入、購入金額や頻度に応じた「ポイントプログラム」や「会員ランク制度」の実施、お客様からの問い合わせへの丁寧で迅速な対応、購入後のアフターフォロー、ペットの健康に関する有益な情報の提供(メールマガジンなど)といった、お客様との長期的な信頼関係を築くための地道な活動が、じわじわと効果を発揮します。

私がこれまで見てきた中で、ペットフード事業で成功を収め、長くお客様に愛され続けている企業に共通しているのは、「本当に良い製品を作る」という情熱と努力はもちろんのこと、その製品を「お客様に届け、喜んでいただき、そして事業として継続させていく」ための、地道で賢明な努力を惜しまない姿勢です。

まとめ:想いをカタチにし、届け続け、愛されるブランドへ

さて、今回は製品の「表示」と「マーケティング・事業継続の極意」という、ビジネスを成功に導くための重要なポイントについてお話しさせていただきました。

  • お客様との最初の約束であり、信頼の証となる「パッケージ表示」の法令遵守と誠実さ。
  • そして、情熱をビジネスとして花開かせ、育てていくための「マーケティング」と「事業計画」。

これらの要素は、まるで車の両輪のようなものです。どちらか一方だけが優れていても、事業という名の車はまっすぐ前に進むことはできません。製品開発に注いだ情熱と同じくらいの熱量を持って、市場と向き合い、お客様と向き合い、そして事業そのものと真摯に向き合っていくこと。それこそが、みなさんのブランドを、一過性のブームで終わらせることなく、長くお客様に愛され、社会に貢献し続ける存在へと成長させていくための唯一だと私は考えます。

ペットフード事業は、愛する犬たち猫たちの健康と幸せに直接貢献できる、本当にやりがいのある素晴らしいビジネスです。しかし、その一方で、多くの知識と、細心の注意と、そして絶え間ない努力が求められる、責任の大きな事業でもあります。

もし、具体的な事業検討を進める中で、何かお困りのことや、専門家のアドバイスが必要だと感じることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。みなさまの熱い想いが、多くのペットとその飼い主のみなさんに届き、たくさんの笑顔が生まれることを、心から応援しています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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